ぎゅぎゅっとてんこ盛り : 第7回 吉沢章さん

◀ 「ぎゅぎゅっとてんこ盛り」もくじへ

 

 

各分野の最先端の方々にお話をお聞きするインタビュー企画。今回は、一般社団法人 映像配信高度化機構の吉沢章さんに4K8Kやサラウンド音響など圧倒的な高臨場感を楽しめる「次世代型コンテンツ配信サービス」について伺いました。

※4K8Kとは、次世代の映像規格で現行ハイビジョンを超える超高画質の映像です。

 

—4K8Kの高度な映像配信技術によって、まるで本物を見ているような感覚でコンテンツを大画面で楽しめる世の中へ。—

 

ーー 映像配信高度化機構は具体的にどのような活動をされているのですか。

 

吉沢 私たちは、4K8K、サラウンド音響など高臨場感を楽しめる「高度映像配信サービス」について技術仕様を決めたり普及推進を進めたりしています。4K8Kの放送では映像をかなり圧縮しなくてはならないので、どうしても画質が悪くなります。一方、通信衛星や光ファイバーを使うと非圧縮に近い状態で届けられるため、高画質映像を大画面で楽しむことができ、それだけでも家庭のテレビとは全く違う体験が得られます。4K8Kの大画面ビューイングという新しいビシネスの分野が拓けるのではないかということで可能性を探っています。

 

 

ーー 吉沢さんはどのような経緯で4K/8Kの事業に携わるようになったのですか?

 

吉沢 私は、東北大学の理学部で宇宙物理学を専攻していて、その後NHKに入り、NHKスペシャルなどの特集番組や、科学環境番組部というところで宇宙関係の科学番組などを作って、20年ほどプロデューサーをやっていました。世界中を飛び回り最先端の科学技術を取材して、皆さんに分かりやすく見てもらえるように番組づくりをしてきました。
 その後、メディア戦略を担当する部署に異動して、BSデジタル放送の普及や 2011年のテレビ放送の完全デジタル移行にも携わりました。そして、2013年頃から、4K8Kの良さを日本中、世界中で多くの人に楽しんで貰える環境を整えたいと考え、4K8Kの推進に取り組み始め、2016年に一般社団法人が設立されて、その事務局で働くこととなりました。

 

ーー 4K8K研究はどのくらい古くからあったのでしょうか?

 

吉沢 4K8Kはすごく歴史が古いです。NHKの放送技術研究所は、ハイビジョンの研究開発が終わり実用化に向けて動き出した1990年代から、その次の世代のテレビとしてスーパーハイビジョンと呼ばれる8K技術をターゲットに研究を始めました。その時の研究所のメンバーが、圧倒的な臨場感を味わえる次世代のテレビを作りたいと考えたのがキッカケですね。
 圧倒的な臨場感を与えるにはどのような要素が必要かを調査したところ、人間の視覚は視野角が100度〜110度で、その視野角いっぱいに画面が広がると臨場感が増すということが分かっていました。次に大事なのが画素が見えないこと。 画素が見えると脳は目の前のモノを映像と認識してしまい、脳は本物と感じません。更に調査した結果、横画面の画素数を8000まで小さくすれば、視野角110度まで近づいたとしても画素は見えないということが分かった。脳にはそこに映っている映像が、本物か映像か区別がつかないというわけです。なので、画素を小さくする研究開発など、実用化までおよそ25年かかりました。

 

ーー この取り組みは日本が先進的なのでしょうか?

 

吉沢 8Kに関しては、NHKが世界に先駆けて研究を行い完成させ、今では、世界の放送の標準規格になっています。一方で、世界中の企業がテレビや上映装置の8K化をものすごい勢いで競って開発しているため、現時点では、日本のテレビ、映像技術が飛び抜けて進んでいるという訳ではありませんね。

 

—高精細、高画質、高音質がもたらす4K8Kによるコンテンツの変化—

 

ーー 4K8Kと相性のいいコンテンツはどのようなものですか?

 

吉沢 画素が見えないことで、本物らしく見せらせるという点は応用しやすく、様々な分野の方が研究開発をしています。
 例えば、NHKはルーブル美術館と共同で、8K高画質で記録した美術作品などを8K大画面で映像展示するという試みをやりました。このプロジェクトでは、一年中展示できないような国宝級の美術作品を事前に8Kで撮影しておき、可能な限り実寸台で映像展示することで、本物として感じてもらえる8Kシアターを美術館がそれぞれ常設で持ち、収蔵している作品が展示できない時でも好きなタイミングでオンデマンド的に全ての収蔵作品を鑑賞できるようにするということを目指しています。将来的には、それぞれの美術館の作品を高精細映像でアーカイブしておき、ネット上で管理したものを別の場所でも見ることができるようになるでしょう。なので、美術品との相性はいいですね。
 それからスポーツや音楽などのライブビューイングもいいです。野球もサッカーも音楽ライブも大会の規模やアーティストのネームバリューが大きくなるほど、会場に入れるお客さんの数は限られます。中継を行うにしても、ハイビジョンだと個々の選手の動きやライブ会場の全景や雰囲気とかが細く分かるような画質ではなく、どうしてもアップで映さなくてはなりませんでした。しかし、8Kであれば、人間の目と同じ程度の高精細なので、客席にいる感覚で試合や音楽ライブを楽しめます。さらに映像だけでなく、音についても5.1チャンネルや、22.2チャンネルを使い、音楽ライブの会場と同じ所にスピーカーを置いて音場を再現すると、まるでその場にいるような音を聞くことが出来ます。
 ただし、家庭用のテレビは画面が小さく、臨場感を得るには至近距離で画面を見る必要があるので、200〜300人で一度に楽しんで見ることができる映画館のような大スクリーンの方が適していますね。そうした施設が世界中に増えると、会場に入れるのは5万人程度でも、+100万人ぐらいの人たちがまるで会場にいるような感覚で楽しむことができます。おそらく世界中のアーティストが実現を望んでいるでしょうし、ファンの方も会場まで足を運べない音楽ライブをよりリアルに見たいでしょう。

 

ーー ライブビューイングの精度が上がることで満足度が上がってくるのですね。

 

吉沢 ただやはりファンの方としては、アーティストと同じ空気を吸いたいでしょうね。なので、現場に行くことには敵わないんです。
演劇などでは、客席と舞台の距離が遠いために、役者同士の微妙なやり取りや表情が分かりづらいことがあります。それをテレビでは アップサイズで映像編集していますよね。そうすると、編集によって臨場感は損なわれ、演劇とは別の「誰かが編集した作品」を見せられているような感覚になるんです。
 しかし4K8Kならば、最低限役者同士の関係がわかる程度のワイドな画角で撮っても表情までわかるので編集も最低限になり、客席で本物の舞台を見る感覚で、その上表情が分かる。更に臨場感が損なわれない作り方をしてやると、客席にいるのとは違う楽しみ方ができるようになります。この分野はすでにビジネスになりに始めていて、人気のある劇団の演劇を4Kで撮り、最低限編集したものをライブハウスや映画館の大画面で上映したこともあります。一度本物を見たファンの方からも、4K映像の演劇上映では、違った楽しみ方が出来ると評価されています。
 他のコンテンツにも同じことが言えるので、コンテンツにあった撮影のやり方、配信の仕方、音の工夫など、楽しみ方に応じて技術をマッチングさせるノウハウが蓄積されて、より良くなっていくでしょう。

 

 

—医療分野における4K/8K技術の応用—

 

ーー 映像の高画質化によって、音楽やスポーツ以外での活用がされ始めた事例などはあるのでしょうか。

 

吉沢 医療分野に8Kカメラが活用されていますね。内視鏡手術でお腹に穴を開けて、8Kの高精細カメラとメスを入れて手術をしています。
 ハイビジョンと8Kの内視鏡カメラの性能の違いは、広範囲を映しても全体が細かく見えるということです。8Kカメラは全体を映した上で、メスを当てるべきところも詳細に見えます。全体が見えているので手術がしやすく時間も短縮されますし、ちょっとした変化も分かるのでメスを入れている所以外の場所でどのような変化が起きているかも見られる状態にあります。8Kだと、ハイビジョンで見えない毛細血管などが細かく見えるため、毛細血管を切らない手術ができるので出血量が減ったそうです。
 また、普通の開腹手術の記録にも使われています。難しい手術の場合、執刀医以外に、それぞれ他の部位の専門家が隣の部屋でモニターを見て指示を出します。8Kだと手術の現場を見ているような感覚で詳細に映し出されるので、ハイビジョン時代より適切な指示を出せるため、内視鏡カメラと同様に、多くの病気に対して応用され始めています。
 加えて、この映像は研修医の研修にそのまま使えるため、極めて重要な教育資料となっています。学会などでゴッドハンドと呼ばれる先生の手術を8Kで記録したものを見ることで、患者さんの病気や病巣に応じてどのようなアプローチをしたか、本物の現場を詳細に見て理解することができるようになりつつあります。

 

—4K8Kの配信プラットフォームができる事で、楽しむ人が増えて開発がさらに進み、低コストでサービスを実現できれば、リッチなコンテンツを手軽に楽しめる世の中に。—

 

ーー 4K8Kの映像を広めていくためにどのような取り組みをされていますか?

 

吉沢 総務省は、2020年の東京オリンピック・パラリンピックで世界に先駆けてICT技術を社会実装して便利な世の中にするために、いくつかのアクションプランを決めて実現を目指しています。その中の一つに高度映像配信サービスがあり、公共施設に大画面上映設備を作り、臨場感あふれる4K8K映像を手軽に大勢の人に楽しんでもらうことができる配信サービスの開発実用化を目指し、その活動主体として私どもの法人が設立されました。
 今年の12月から4K8Kの本放送が始まります。これまでハイビジョンで作られていたコンテンツは徐々に4K8K制作に移行していきます。そうして作られた4K8Kコンテンツをプラットフォームに置いていただくと、上映施設側から検索し、低画質で視聴した後、気に入ったものがあればダウンロードして4K8Kで上映できるようになっています。上映施設としては、スポーツ施設、イベントホール、ライブハウス、音楽ホール、映画館、科学館、美術館、プラネタリウム、博物館、学校や医療機関、公民館、文化センター、多目的ホールなど様々な場所での利用を想定しています。
 昨年度、このプラットフォームの技術仕様を完成させたので、この仕組みに準拠した4K8K映像再生装置(パソコンなど)を、上映施設側で導入することで4K8Kコンテンツを手軽に楽しめるようになります。地方公共団体が持っている多くの施設は、ハイビジョンのプロジェクターと映画館のような大型スクリーンを講演会等のために常設で持っていて、中にはすでに4K8K上映装置が導入されている施設もあります。今後はその数がどんどん増えていくでしょう。そうした施設で我々のプラットフォームを活用してもらえると、放送局、プロダクション、映画会社などが作った4K8Kコンテンツを地域の方々に手軽に楽しんでいただけるようになります。
 リオ五輪の際には、ハイビジョン画質で約250箇所で自治地等が主催するパブリックビューイングが開催されましたが、2020年の東京オリンピック・パラリンピックでは、自治体が主催者となって500箇所以上ででパブリックビューイングが行われるといわれています。放送局などに協力をお願いして、我々も手伝いつつ、2020年には、4K8K大画面ライブビューイングを体験して頂けるような場を増やしたいと考えています。

 

ーー 普及にどのような課題がありますでしょうか?

 

吉沢 大画面で楽しむような作り方をしなくてはいけないことですね。一般的なテレビは大きくとも70インチ程度で、そのサイズにあった映像を作る場合はアップの画を主として制作します。そうしないと楽しめないからです。ところが、4K8Kの場合は、大画面での放映に向いているので映画など大画面用の作り方を研究する必要がありますね。
 また、映画のようにコンテンツを上映することで収益を得る4K8K大画面上映ビジネスを維持させるには、運営経費やコンテンツ代を回収できる仕組みが無いと長続きしません。4K8Kの施設に足を運んでいただかない限りなかなかユーザーは増えないので、大画面で4K8Kを見ると別の楽しみ方ができることを理解してもらう機会を設ける取り組みを行わなくてはいけないですね。
 もうひとつの課題は通信ネットワークです。ダウンロードしてから再生上映する場合、通信経費はあまりかからないのですが、ライブの場合はある程度の帯域を確保しないと通信が途中で切れてしまうので、トラフィックをどうするかを解決してあげないといけません。
今後は、4K8Kコンテンツを大画面で楽しむ人が増えて意識が変わり、技術的な面での開発が進み低コストでサービスが提供できるようにする必要がありますね。

 

 

—2020年のオリンピック・パラリンピックに向けて、衛星放送やパブリックビューイングによって、ますます身近になる4K8K映像。—

 

ーー 2018年の12月1日から4K8K衛星放送が始まるとの発表がありましたが、これまでにどのような準備を行ってきたかを教えてください。

 

吉沢 4K8Kの本放送のスタートに向けて、 NHKも民放も制作用の4K8K機材や中継車、送信設備などを計画的に準備してきています。しかし、4K8K機器は限られていて、全てのコンテンツを一挙に4K8Kにすることはできないので、徐々に4K8Kコンテンツの割合が増えていくことでしょう。初期段階では、4K8Kのよさをアピールできる、美術、音楽、自然紀行など相性の良いコンテンツに加えて、編集作業が必要ない、そのまま放送できる、スポーツ中継や音楽のライブ、演劇、歌舞伎、宝塚などのステージコンテンツが多くなると思われます。

 

 12月に始まる4K8Kの放送は新しいテレビ受信機がないと見れないので、秋口から市販される4K8K放送対応のテレビを買っていただく必要があります。現在売られている4K対応テレビでは、別にチューナーを買い足していただかないと放送を見ることはできません。
 新しい4K8K衛星放送には、ハイビジョン放送では実現できなかったいくつもの新機能があります。その一つ、ハイダイナミックレンジ(HDR)という新機能によって、映像の明暗の差を人間の目と同じぐらいのレベルで表示することができるようになります。例えば、サッカーなどの昼間の試合中継を見ていると、日向と日陰では明暗の差がかなりあるため、現行のハイビジョン放送では、明るい方に合わせると暗い方は暗くなりすぎて、何をしているかが分からない映像になってしまいました。4K8K放送では、HDRの技術ができたことによって、人間の目と同じように、日陰の部分でも日向の部分でも同じ画面の中で、人間の目で見た時と同じように映し出すことができるようになったのです。また、微妙な色の違いについても人の目と同じぐらいのレベルで再現できるようになり、人の肌ツヤや化粧の色合いの違いも、紅葉の赤や黄色の微妙な色の違い、新緑の淡い緑から深い緑までの差なども忠実に再現されるようになります。

 

—オリンピックをきっかけに4K8K映像が近所で見られる世の中へ—

 

ーー オリンピックが終わった後の展開としてはどのようなことを考えていらっしゃいますでしょうか?

 

吉沢 これまで、スタジアムなどの施設は、オリンピックやサッカーワールドカップなどのビッグイベントがある時は使われますが、それが終わるとあまり使われなくなります。せっかく導入した4K8K上映設備が使われないともったいないので、ビッグイベントが終わった後も「普段使い」できるようにしなといけない。そこで、先ほどのプラットフォームに映画、スポーツ、音楽、演劇、歌舞伎、宝塚、郷土芸能、祭、教育、医療などあらゆるジャンルの映像をここに置いていただけると、ビッグイベントのない時期でも、各施設で4K8Kコンテンツを圧倒的な臨場感で上映することで、施設が日常的に使われることにも繋がりますし、4K8Kを手軽に楽しめる世の中になると考えています。

 

 

—新しい技術を融合する事で、エンターテイメント性を加えた新たな楽しみ方を創造する仕組みとは。—

 

ーー 4K8Kを超える次世代型のコンテンツの開発に関してはいかがでしょうか?

 

吉沢 3月に実施した東京ガールズコレクション(TGC)の4K大画面ライブビューイング(http://tgc-visions.jp/)では、映画館のスクリーンを横に3つ並べて、12Kの横長超ワイドスクリーンに挑戦しました。テレビの画面サイズである16:9で切ってしまうとどうしても、一部分しか映せないので、3つ繋げてあげることで、TGCの迫力あるランウェイ全体や音楽ライブのステージそのものをライブビューイング会場に再現しようという試みです。
 これが実現できるようになったのは、MMTという新しい技術方式ができたからです。4Kカメラを5台ほど並べてそれぞれの角度から撮影し、コンピュータでリアルタイムにそれぞれの映像をシームレスに繋げると、16:9テレビの画面を横に3つ繋げて、横長の超ワイド画面として、TGCの会場にいるかのような感覚で、TGCの雰囲気そのものも楽しめるようにしてみました。今回の4K横長超ワイド画面のライブビューイングを見たお客さんたちは、まるでモデルがその場でランウェイを歩いているような感覚で楽しむことができたというわけです。また、脇にある縦置きのスクリーンには、通常の4Kカメラで撮影したファッションモデルの表情や衣装のディテールなどがわかる映像を生中継スタイルで流しました。会場では、この両方を見ようとすると双眼鏡が必要になるのですが、ライブビューイング会場では視線を移すだけでどちらも楽しむことができます。この横長超ワイド映像は、音楽ライブやスポーツ中継でも応用できます。画面の長さも大きさも自由に決められるので、コンテンツに合わせた最も臨場感を味わえるやり方で楽しんで頂きたいです。今回は複数台の4Kカメラで実施しましたが、コンピュータの処理速度が上がれば、複数台の8Kカメラでも同様なライブビューイングが可能になるので臨場感は更に増していくでしょう。将来的には、ライブハウス、イベントスペース、音楽ホール、映画館などの上映設備も横長ワイドになるかもしれませんね。

 

 

 もう一つの新しい試みは、スポーツの4K映像有料ライブビューイングを熊本と恵比寿を繋ぐ形で実証実験を実施しました(http://pr.fujitsu.com/jp/news/2017/11/27-1.html)。内容としては、熊本で行われたバスケットボール Bリーグのオールスター戦を複数の4Kカメラで撮影し、恵比寿ガーデンプレイスのイベントホールに設置した550インチの大型スクリーンに4Kライブ配信するというものです。
 特別な試みとしては、試合会場である熊本の体育館内と床下に52本のマイクを仕込み、録音した音を恵比寿ガーデンプレイ内と床下にスピーカーを仕込み、床を揺らすアクチュエーターも入れて、熊本の試合会場で選手がドリブルをすると、恵比寿でも同じ場所から音と振動が出るようにしました。スタンディングでライブビューイングした方は、まるで試合会場にいる感覚で応援できました。技術的には、ペンライトを持っていれば同期信号によって会場と同じように点滅させることや、照明を連動させることも可能です。
 Bリーグの事務局の人たちは、オールスター戦を試合会場で観戦できる人数は限られているので、今回の4Kライブビューイングがあちこちの会場で実現できると、地元出身のオールスター選手や、地域ごとチームごとに応援ソングを流すなどの一体感を生み出すこともできると考え、新たな取り組みも模索しているようです。このようにBリーグさん、 Jリーグさん、バレーボールリーグさんなどと連携させていただき、4K8Kのライブ配信という新しいテクノロジーをベースに、エンターテイメント性も工夫して上乗せして、より楽しめる次世代型のスポーツライブビューイングに進化していけたらいいなと思っています。

 

 

 

 ガンバ大阪のホームである吹田スタジアムでは、Panasonicがゴールネット裏のコアなファンが応援するエリアの前に巨大な四角いバルーンスクリーンを配置し、ガンバ大阪のアウェイ試合を高臨場感映像で撮影し、音響システムも工夫して、より臨場感のあるパブリックビューイングをやっています。(https://news.panasonic.com/jp/press/data/2017/09/jn170907-1/jn170907-1.html)参加した3000〜5000人ほどのファンは、アウェイ試合を臨場感のある環境で一緒に応援できてとても評判が良かったようです。アウェイの時はホームスタジアムで試合がないため収入にはならないかけですが、こうした工夫を凝らした取り組みのライブビューイングが定着すると、アウェイ試合でもホームスタジアムである程度の収入が見込めるようになるかもしれませんね。

 

 ちょっと変ったところでは、プラネタリウムの取り組みがあります。プラネタリウムは全国で300館ほどありますが、そのうちの70館ほどは4K、8Kの上映に対応しています。全天周で360度の4K8K映像が見れるので、映画館のような普通の平面のスクリーンに比べて、より臨場感のある映像が楽しめます。
4K8Kの 360度カメラは、いろいろ開発も小型化も進んでいるので、様々な場面で360度の映像を簡単に撮影できるようになっています。例えば、音楽ライブで客席前方の席に360度カメラを置き、画面の前方にはステージ、後方には飛び跳ねるファンがいる状況をプラネタリウムで再現すると、ファンと一緒に楽しんでいる空間を演出することもできます。

 

 2020年に向けて、4K8Kのシアターは次々と作られつつあります。そうなると上映する4K8Kコンテンツが必要になってくるので様々な方々と連携して面白い大画面映像を作ってきたいと思っています。是非竹芝でもやりましょう!2020年を見据えて色々な新しい試みができるのではないでしょうか。

 

 実は映画館も変わってきていて、大阪の109シネマズなどは、一度に800人入れるとても大きいシアターがあります。ミストの発生や椅子の振動、3D上映などの付加機能も次々と導入されています。
映画館の4K化も進んでいて、全国の映画館のスクリーン数は3000程なのですが、その半分は既に4Kになっています。ただ、4Kの上映設備は映画用に準備されているので、4Kコンテンツの再生上映は可能ですが、ライブで送られてきたコンテンツをそのままライブで上映することができません。ここが、音楽ライブ、スポーツ中継などの4Kライブビューイングが広まっていかない一つの原因といわれています。しかし、韓国のサムスンが映画館用のLEDを開発し、去年夏から売り出しはじめました。これが韓国や中国、ヨーロッパの映画館に導入されました。こちらは4Kプロジェクターでスクリーンに投影するという従来の映画館の方式とは違い、12月に始まる4K8K放送の新機能、ハイダイナミックレンジ(HDR)や高色域(微妙な色の違いを人間の目と同じくらいのレベルで再現)にも対応していて、しかもライブ上映もできます。この映画館用LEDに比べても、綺麗さが格段に違う新方式の「Crystal LED」という製品をSONYが開発し販売を始めています。普通のLEDに比べ黒色をちゃんと表示できるので、映画館用のLEDとしては、こちらの方がおそらく主流になってくるといわれています。映画館も、大きな転換点にあるのかもしれません。

 

ーー 4K8K映像を普及する過程で気づきはありましたでしょうか?

 

吉沢 瀬戸内海沿岸の県をホームグラウンドとする「瀬戸内48、STU48」という、AKBの姉妹グループがあって、地域でのデビューからメジャーデビューまでの半年間を4Kで記録したものを映画館で有料で上映しました。STU48は、瀬戸内の綺麗な風景を彼女たちの歌に乗せて全国にPRするという取り組みがコンセプトということで、最初のプロモーションビデオも4K制作されていています。東京での上映会は満席で、メジャーデビュー前の、初々しいドキュメント映像は、4K映像ということもあり大変好評でした。メジャーデビューしたタイミングでオリコン一位になったんですが、有名になればなるほど、デビュー前の記録を見たいファンは増えますよね。メジャーデビュー前の記録は、人気が出てからでは撮れないので、その映像を上映すればファンが確実に見に行きます。なので、記録としては4Kで撮っておいた方が、将来的には価値が上がるということかと思います。
東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年に向けて、
4K8K大画面ビューイングの圧倒的な臨場感、新しいコンテンツの楽しみ方、スポーツライブや音楽ライブを仲間と一緒に盛り上がって応援できる醍醐味、
まるで本物を味わっているかのような美術鑑賞、などなど、いろいろな方々と
連携して、4K8K、3Dなどの高精細映像とサラウンド音響による大画面ビューイングが、日本中、世界中で体感できるようにしていきたいと思っています。

 

 
 

一般社団法人映像配信高度化機構 事務局長
吉沢 章
 (NHKメディア企画室付)

 

1980年 NHK入局。北海道北見局で5年間番組制作、筑波科学博覧会日本政府館「知床の四季(初のHD作品)」も制作。
1985年より番組制作局サイエンス番組部に所属し、18年間に渡りサイエンス番組(ウルトラアイ、クローズアップ現代、NHKスペシャル等)の制作に携わる。
2006年に一般社団法人デジタル放送推進協会(Dpa)の地デジ普及部長 として出向。3年間に草彅剛出演の地デジ普及推進スポットの制作、テツ&トモの地デジ普及全国キャラバン等を進める。
2009年に経営企画局[デジタル推進]に復職、NHKの完全デジタル移行の推進に務める。2013年、メディア企画室室長としてスーパーハイビジョンとハイブリッドキャスト推進普及を統括する。
2016年に映像配信高度化機構の事務局長として出向。
4K8K、3D、立体音響の大画面ビューイングの普及推進、そのための配信ネットワークの技術仕様作成などに取り組んでいる。