After COVID-19 新しいコンテンツ戦略へのステートメントの表明

 新型コロナウイルス感染症の蔓延により、コンテンツの制作、流通、利用が大きな影響を被っている。未曾有の危機を乗り越えるためには、経済的補償にとどまらず、未来に向けて、新たな社会を創造する必要がある。

 一般社団法人CiP協議会(以下CiP協議会)はコンテンツ企業、プラットフォーマー、インフラ事業者等によって構成される団体であり、新しいコンテンツ戦略へのステートメントとして、ここに第一弾を表明する。

 今後も、このステートメントを広く世間に対し、そして知的財産戦略本部等の政府に対し展開する。

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1.場作り

・家賃減免を条件としたオーナーへの固定資産税減免措置

・ドネーション分配制度の整備

・価値ある場創り

 ライブハウス、イベントスペースについては、2月26日に政府による自粛要請がなされた以後、大きな経済的な損失が発生し、2ヶ月半が経った現在では多数の店舗が閉鎖を余儀なくされている。政府の支援策が届いていない会場があるが、こうした会場が日本の音楽をはじめとするエンターテインメント文化を培ってきた。ライブハウス、イベントスペースという物理的な場所を救済するのではなく、そこに集う人々のコミュニティ、文化こそを保護する必要がある。

 ライブハウス、イベントスペースの運営には、固定費である賃料負担が大きく、また不動産ビジネスと比較して短いスパンで資金を回転する必要がある。同時に会場で働く技術職(PA、照明等)はフリーランスであることが多く、現在の支援策では効果的ではないことが多い。

 ライブハウス、イベントスペースやそれらを中心とする街はコンテンツが人々を誘引する形態であり、「場」そのものの価値を保つことにより、現在の文化、産業の生態系を守ることができる。

2.新ビジネスモデルの創造

・デジタルトランスフォーメーションの促進

・エンターテイメント×テクノロジーの機会創出

・新しいインフラの整備

 政府によるイベント自粛要請以後に、ライブやイベントの配信、既存コンテンツのオンライン公開が急速に広まったが、リアルでの開催を中心に形成されてきた既存のビジネスモデルでは、新たな価値を提供できておらず、収益化も実現できていない。イベント、パッケージ販売などフィジカルでのビジネスを中心としていた産業構造から、オンライン参加やヴァーチャル体験へのデジタルトランスフォーメーションへのシフトが急務であるが、現状では対応できていない。

 そこで、コンテンツのデジタルトランスフォーメーションを促進し、さらにはグローバルな展開を推し進める、新たなビジネスモデルを創出する必要がある。ライブエンターテイメントの熱狂やカタルシスに代替する新たな価値をテクノロジーとのコラボレーションによって、生み出す必要がある。それには5Gに代表される超高速大容量のインフラ整備が必要となる。さらに、人々の働き方、ライフスタイルにも新しい手法を提示する必要がある。これらによって、新しい時代のエンターテイメントとその楽しみ方を創造する。

3.特区

・海外向けビジネス税制緩和

・外国人雇用拡大のための規制緩和

 今夏に予定されていた2020東京オリンピックにむけて、世界における日本のプレゼンス向上を目指してきたが、仕切り直しが必要となった。渡航が制限され、グローバルにビジネスを展開していた企業の多くはビジネス活動が制限されている。特に、国際分業が進むアニメなどの映像産業においては、映像制作の中断を余儀なくされている。

 従来から欧米では映像産業育成のために税制優遇策が実施されており、特区を用いてCGやVFXの制作会社を集積させている。そこで、特区を活用した税制優遇策を実現し、日本の映像産業がグローバルに競争可能な環境を今こそ整備すべきである。

 あわせて、海外の優秀な人材を雇用するための規制緩和も同時に実施するべきタイミングだ。これら特区を用いた施策によって、日本のコンテンツ業界の競争力を強化する。

4.ジャンル横断

・横断的プラットフォームによる発信力の強化

・著作権問題の共同解決

 コンテンツ産業はジャンル別にビジネスや海外戦略を展開してきたが、欧米の巨大資本によるプラットフォームと比較し、大きな成果を出しているとは言い難い。現時点においても、ユーザーやファンの巣ごもりに対応するべく、各コンテンツ産業が独自にデジタル配信の拡大に挑戦しているが、業界ごとに慣習も異なり、横断的なコラボレーションが実現していない。

 現在の危機を乗り越え、新たなクールジャパン戦略を実行するためには各コンテンツを横断的に発信するプラットフォームの構築が必要となる。まんが、アニメ、ゲーム、音楽など様々なコンテンツを横断的に発信することで、ユーザー利便性を高めて、市場拡大のチャンスを増加させる。各々の産業がデジタル化に対応するために培ったノウハウやマーケティング手法、海外の日本好きファンなどを広く共有し、また著作権処理についても集中管理による解決を目指すべきである。

 これらの機能を持ったプラットフォームを整備し、もって日本のコンテンツ発信効果を最大化させる。

5.人材育成

・未来志向人材の評価と育成

・新規ビジネスの創造支援

 コロナウイルス感染症の蔓延により、従来の学校という制度も大きく変わる。教育のオンライン化、デジタル化が拡大すれば、それに対応可能な学校システムが必要となる。また、社会の変革により、求められる人材像も変容する。新しい社会を牽引する未来志向人材や起業家の育成がますます必要となる。

 そのために、グローバルスタンダードな教育システムを実現する。優秀な人材のグローバルでの活躍を支援する。また、産業界と連携した場の設計や、ベンチャー企業とコンテンツ産業との連携、ファンドによるスタートアップへの出資を促す。これにより、新しい社会を持続的かつ発展的に創造する。

 これらを通じて、CiP協議会はコロナウイルス感染症に対峙するコンテンツ業界の変革を支援し、未来に向けて、新たな社会を創造する。

<ヒアリング御協力>

・案納俊昭 氏:株式会社スペースシャワーネットワーク取締役 常務執行役員

・稲蔭正彦 氏:慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科 研究科委員長 

・内田治宏 氏:マーザ・アニメーションプラネット株式会社 映像事業本部 上席執行役員

・梅澤高明 氏:ナイトタイムエコノミー推進協議会 A.T. カーニー 日本法人会長 CIC Japan 会長

・田中敦典 氏:株式会社アルベログランデ 取締役

・夏野剛 氏:慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特別招聘教授

・松野玲 氏:一般社団法人アーティストコモンズ 専務理事

・箕川智久 氏:株式会社エンターメディア 代表取締役

・その他、ベンチャーキャピタル代表など