『偉大なるニッチを目指せ!〜2020年のデジタル×コンテンツ〜(前編)』

『偉大なるニッチを目指せ!〜2020年のデジタル×コンテンツ〜(前編)』

 

2020年という節目を目前に控え、デジタル•コンテンツを取り巻く環境は刻々と変化している。特に、リアルな場所としての「街」、未来を作るための「教育」、この二つのワードがデジタル•コンテンツの世界ではとても重要になってきている。

 

そんな中、港区竹芝地域をデジタル、コンテンツの集積地として再開発するプロジェクト、CiP協議会の設立イベントが4月23日に開催された。
「2020年のデジタル×コンテンツ」というテーマのもと、中村伊知哉(CiP協議会理事長)、大﨑洋(吉本興業株式会社 代表取締役社長)、稲田修一(東京大学先端科学技術研究センター特任教授)、夏野剛(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特別招聘教授)によるトークセッションが行われた。今回は、そのトークセッションの前編をお届けする。

 

■コンテンツ集積都市としての竹芝の可能性

 

中村:今、竹芝では堅くない、柔らかいことをやっていきたいと思っているんです。例えば、大﨑さんがやっている沖縄国際映画際や、夏野さんが関わっているニコニコ超会議など。そんなことを竹芝で毎日やりたい。
そしてそこに稲田さんの持っている先端技術を融合させれば、何かが起きる気がしています。
まずは皆さんに、2020年まで、そしてそれからのデジタル、コンテンツビジネスがどう変化していくと捉えているかお伺いしたいと思います。

 

夏野:今回竹芝は特区になった。今までのコンテンツのあり方に、振り回されないようにしてほしいです。
例えば今までの日本のコンテンツは、供給者側のルールで成り立ってしまっている。どうやって権利を守るかだとか、売り上げを守るかだとか。中国に行くと、日本の音楽は凄い人気があるんですよ。谷村新司さんの「昴」なんか凄い人気がある。
しかしカラオケに行くと、日本のアーティストだけ本人映像がないため、中国の人は谷村新司がどんな人か知らない。一方、中国は当然だけど、韓国のアーティストも皆本人映像なんですよ。だから、韓国のアーティストはそこで良いプロモーション出来る。守り過ぎるとやはりコンテンツは広がらないんですよ。そこを広げないといけない。
今、日本のコンテンツは日本語で守られているんです。2020年になったら、コンテンツは自動翻訳されるようになる。字幕、吹き替えが要らなくなる。日本語という壁がなくなった時に、日本のコンテンツをどう守るかを考えないといけない。さらにはどう広めるか考えないといけない。
そこで提案。竹芝に、日本のすべてのコンテンツがアーカイブされていて、さらにここにくれば見放題というものを作りませんか?ここで全てのコンテンツが見れて、さらには買えるという場所が出来れば世界中からバイヤーがくると思います。

 

中村:早速やりましょう。

 

夏野:あともう一つお願いしたいことがある。教育目的などでにコンテンツを使いたい時に、すべて許諾をとらないといけないのをどうにかしたいんです。僕は攻殻機動隊に全て技術の未来が詰まっているから、メーカーの社長にとりあえず全部見てください言っている。それを学生にも見せたい。竹芝に来れば、見せたい部分を全部編集して学生に見せれちゃう。そんな場所が欲しいんです。

 

夏野さんトーク

 

■沖縄映画祭とニコニコ超会議

 

大﨑:沖縄で映画祭を開いて7年目になります。タイトルは「島ぜんぶでおーきな祭」。今年から京都でも映画祭を開いている。こっちのタイトルは「映画もアートもその他もぜんぶ」。
この時代なので、映画とかアートとかっていうジャンルにとらわれないイベントをやりたいと考えている。そして、そこでいろんなエンターテイメントを創出しようと思ってやってきました。やはり著作権の問題などは色々ありますが、ここでしか作れないものを作ろうという思いでやってます。
高度経済成長の頃なんて、吉本のような仕事は実業ではなく虚業でしかなく肩身がせまかった。しかし、最近は素晴らしいコンテンツの会社ですねなんて褒めてもらえることもある。そんなところで、時代の風向きの変化を感じたりしてます。

 

中村:私も沖縄国際映画祭に毎年参加しているのですが、あんなイベントは他にない。映画祭には、マーケット機能もあれば、小学生が映像を作ったりしていて「教育」の機能も備わっている。そしてなにより、だんだんとイベントが大きくなり、今では全沖縄の市町村が参加している。ところであれは黒字なのですか?

 

大﨑:ニコニコ動画さんと、同じで赤字です(笑)。

 

中村:ニコニコ超会議にはなにか大きな野望はあるのですか?

 

夏野:いや赤字ですからねえ(笑)。しかし、すべてのコンテンツがデジタルになってどこでもコンテンツが見られるという状況になると、逆に皆がリアルな場所に集まり出すということが分かってきた。
そこに違う価値が生まれてきているんですよね。リアルに超会議の場所に行って生で見たいってやつが12万人もいて、ニコ生でリアルタイムにコンテンツを見たいっていう奴が去年でいうと800万人もいる。
ここが非常に面白いところで、なんでもかんでもバーチャルに持って行けばいいって訳ではないってことが、ニコニコで証明できた。

 

中村:総理大臣と前科者のホリエモンが同じとこにいるっているのは、中々出来ることじゃないですよね。

 

夏野:ただ一つ言えるのは、趣味の多様化というか、皆が皆野球とサッカーばかりやっているという時代は終わった。ニコニコ超会議の面白いところっていうのは、いろんな趣味の人が集まっていて、しかもその関連の展示があったりする。

 

中村:確かに、学会を見たい人と大相撲が見たい人は違います。

 

夏野:でもそこで大相撲っていうのは、やっぱり皆見てみたいという感じがある。そこにテレビとの共存があると考えてます。狭く深い鉄道オタクも、白鴎がいるとやはり見るんですよね。ニコニコには、このやじうま感覚と狭く深いネットの世界が共存している感じがある。

 

大﨑:確かに、いろんな人がコンテンツを巡って交わる場所が、あるといいなと思っているんです。大阪に芸大や美大出身じゃないアーティストの子が集まるギャラリーがある。そんな場所が生まれてきているのは、凄い面白いですよね。

 

大崎トーク

 

■連携と人材育成

 

中村:竹芝では、バーチャルとリアルの両方を作りながら、様々なものを繋ごうと思っているんです。そこで稲田さん、これから学術機関と繋がっていこうと思っているんですが、他の大学との連携はありうるのでしょうか。

 

稲田:それは大学によると思います。しかし、最近赤字の大学がとても増えています。この循環をどうにかするためには、やはり新しいことをしなければいけない。
大学が新しいことをすると、それを見て学生が入ってくる。入学者数が増えると余裕が出来て、さらに新しいことが出来る、という良い循環が生まれる。そういう意味では、これから大学と連携出来る可能性もあると思います。

 

中村:日本の大学はダメだとよく言われるが、実際のところ競争力はあるのですか?

 

稲田:それは教員によりますね。日本の大学教員は、時代に合わせることができる人とそうでない人がいる。
今は「繋ぐこと」が大きな価値となる時代です。産学官をつなぐこと、異分野を繋ぐことが価値になる。繋ぐためには、外に出なければならない。学問分野によって違いはあるのかもしれませんが、外に良く出て行く人のほうが、価値を作れていると思います。
東大でも、兼職が多い先生が半分ぐらいですね。黙々と学問をやる人も半分。
どちらが価値を創出するかというのは分からないが、今は「繋ぐこと」が大きな価値の創出になると思う。そうすると、外に出なければ、繋ぐことはできない。という意味では外に良く出て行く人のほうが、価値を作れているのかなと思います。

 

中村:それは大学ごとの話ではなく、個人になってきているのですか?

 

稲田:そうです。個人です。

 

中村:CiPも人材育成や起業支援という領域をやりたいんです。そこで大﨑さん。吉本も学校を作っていたり、様々な人材育成を行っている。コンテンツの人材育成という点でいくと、吉本興業は順調に行っているのですか?

 

大﨑:実は明日、アジア住みます芸人の記者会見をして60人ぐらいをアジアの様々なところに行かせるんです。

 

中村:そこでなにをするんですか?

 

大﨑:とりあえず課題発見。まず住んで、その場所の人となにか一緒にやろうと考えています。結局は原点に帰ろうとしている。ゼロに立ち返って地域あるいはアジアに行って、全社員担当がどう考えるか、なにが起きるかを知りたいんです。

 

中村:それに行く芸人さん達は、海外に行きたいと自ら言うんですか?

 

大﨑:そうなんですよ。6000人所属がいるんです。そこに年収300円ぐらいから10億ぐらいまでいる(笑)。海外にいかないかって声をかけると60人ぐらいが手を上げるんです。

 

中村:言葉は?

 

大﨑:もちろん、今からですね。でも、タイマッサージしてたんでタイ語出来ますっていう奴とかがいたりします(笑)。やはり、若い力は気持ちいいですね。そして彼等にはその場所で、その場所の人となにか劇団とか作ってきてもらおうと思ってるんです。

 

前編はここまで。

 

後編は、夏野さんによる大提案「竹芝が世界における偉大なるニッチを目指すべき理由」など、都市とコンテンツの未来に向けた戦略などについて。